瘀血(おけつ)体質とは?
瘀血(おけつ)体質とは、東洋医学の考え方において、体内の**「血(けつ)」**の流れが滞り、スムーズに巡らない状態を指します。この「血」の滞りが長く続くと、体にさまざまな不調として現れることがあります。
特に 30 代から 50 代の女性に多いとされる、冷えや肩こり、くすみ、月経トラブルなどは、この瘀血が深く関わっている可能性があります。ご自身の体の状態を知り、適切なケアを始めることで、不調の改善につながります。
- 東洋医学(とうよういがく):中国を起源とする医学体系で、体全体を一つの有機的なものと捉え、心と体のバランスを重視します。
- 血(けつ):東洋医学における「血」は、西洋医学の血液だけでなく、全身を栄養し潤す生命活動に必要な物質全般を指します。
瘀血体質の方に現れやすい主な特徴
瘀血体質の方は、以下のような体のサインに心当たりがあるかもしれません。ご自身の体と照らし合わせてみましょう。
顔色・肌の悩み
- 顔色が暗く、または紫っぽい、くすみがち。これは血の滞りが皮膚表面に現れやすいためと考えられます。
- しみやあざができやすい。特に青黒いあざができやすく、一度できると消えにくい傾向があります。
- 肌が乾燥しやすい。
痛み・凝り
- 肩こりや頭痛が多い。特に「刺すような痛み」や、痛む場所が固定されている場合は、血の滞りが原因である可能性があります。
- 腰や関節の重だるい痛み。
冷え
- 手足など体の末端が冷えやすい(四肢の冷え)。東洋医学では、冷えは「血」の巡りをさらに悪化させる要因になると考えられています。
月経トラブル
- 月経痛が強い。
- 経血に塊(かたまり)が混じる。
- 経血量が少ない、または月経周期が不規則で遅れがち。
- 無月経(月経が来ない状態)。
その他のサイン
- 唇の色が青っぽい。
- 舌の色が暗い紫であったり、舌の表面に紫色の斑点や点々(瘀点・瘀斑)が見られることがあります。
- めまいや健忘(物忘れ)。
- 精神的に落ち込みやすい、イライラしやすい。
- 痔核(いぼ痔・切れ痔などの肛門の症状)。
瘀血体質改善のためのポイント
瘀血体質をケアするためには、「活血化瘀(かっけつかお)」(※)という、血の巡りを促し滞りを解消するアプローチが基本となります。日々の生活で以下のポイントを意識してみましょう。
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適度な運動で「血」の巡りを促す
- 運動は全身の**「気(き)」と「血」の巡りを活発にします。特にストレッチやウォーキングなど、無理なく続けられる運動がおすすめです。体全体の「気」**が滞りなく巡ることで、「血」の運行もスムーズになります。
- 気(き):東洋医学において、生命活動のエネルギーや機能そのものを指す概念です。血を動かす原動力でもあります。
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体を冷やさない食事や服装を心がける
- 東洋医学では、冷えは「血」の滞りを招く大きな要因と考えられています。温かい飲み物や体を温める食材(根菜類、生姜、シナモンなど)を積極的に摂り、服装も重ね着などで調整し、体を冷やさない工夫をしましょう。
- 「冷たい飲食」や「生もの」の過剰摂取は控えめにすると良いでしょう。
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ストレスをためない工夫をする
- 過度なストレスや感情の抑圧は、**肝(かん)の「気」**の巡りを滞らせ、結果的に「血」の滞りにつながることがあります。
- 気分転換やリラックスできる時間を作り、心穏やかに過ごすことが大切です。精神的なストレスは**「気血」**の消耗にもつながります。
- 肝(かん):東洋医学の「肝」は、西洋医学の肝臓だけでなく、全身の「気」の巡りをスムーズにしたり、血を貯蔵・調整したりする働きを持つ「臓」を指します。
- 気血(きけつ):「気」と「血」という東洋医学における二つの重要な生命物質の総称です。
- 臓(ぞう):東洋医学における内臓の分類で、「精気」を化生・貯蔵する機能を持つものを指します。
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バランスの取れた食生活を意識する
- 「血」は**「水穀の精微(すいこくのせいび)」**から作られるため、偏りのないバランスの取れた食事が重要です。
- 特に**脾(ひ)**は、飲食物から「血」を生成し、全身に運搬する働きを担っています。脾の働きが弱まると、「血」の生成不足や滞りが起こりやすくなります。
- 水穀の精微(すいこくのせいび):飲食物が消化吸収されて作られる、生命活動に必要な栄養物質を指します。
- 脾(ひ):東洋医学の「脾」は、西洋医学の脾臓だけでなく、消化吸収や栄養物質の運搬、血の統摂(コントロール)など、重要な役割を果たす「臓」を指します。
- 精気(せいき):生命活動の根本となる、最も微細で活動的な物質を指します。
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十分な睡眠と休養
- 「血」は夜間に**肝(かん)**に貯蔵され、修復されると考えられています。十分な睡眠は「血」の回復を助け、全身の巡りを整えるために非常に重要です。
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活血化瘀(かっけつかお):東洋医学の治療原則の一つで、血の巡りを活発にし、滞った血(瘀血)を取り除くことです。
まとめ
瘀血体質は、現代女性に多く見られる不調の原因となることがあります。ご自身の体質を知り、日々の生活習慣を見直すことで、血の巡りを整え、より健やかな毎日を送ることができるでしょう。東洋医学では、**未病(みびょう)**の段階で体のバランスを整え、病気を予防することを重視しています。
- 未病(みびょう):病気になる前の、自覚症状はあるが病気と診断されるほどではない状態を指します。